ずいぶん遅い反応ですが、Amazonが(一種の)データベースサービスをベータとして公開したそうです。個人的に非常に気になるサービスです。
-
Amazon SimpleDB (Amazon.com)
-
AmazonのSimpleDBとIBMのBlue CloudがCloud Computingの発展を促す (infoQ)
要するに、AmazonはWEBサービスでデータベースサービスを開始したわけです。まず特筆すべきはその課金体系と価格で、
- データ保存に1GB当たり$1.50/月を課金
- データの転送に1GBごとに$0.10〜$0.18
との事です。つまり使っただけの従量制課金ですが、びっくりするほど安いですね。従量制だと使いすぎが気になるところですがAmazon S3と同レベルの安さ抑えられていますので企業で使うだけでなく、個人ユースまでも視野に入るほどです。
データベースとは言ってもDB2のようなRDBMSではなく、独自の形式のものでデータの操作も独自のライブラリで行います。SimpleDBでできる事をホームページから引用すると、
# CREATE a new domain to house your unique set of structured data.
ドメインの作成。ドメインはデータを入れる場所のようなもので、RDBMSではデータベース、もしくは表に近いものです。
# GET, PUT or DELETE items in your domain, along with the attribute-value pairs that you associate with each item. Amazon SimpleDB automatically indexes data as it is added to your domain so that it can be quickly retrieved; there is no need to pre-define a schema or change a schema if new data is added later. Each item can have up to 256 attribute values. Each attribute value can range from 1 to 1,024 bytes.
アトリビュートのペアをGET/PUT/DELETE可能。これはRDBMSで言えば表/行の操作にあたるところですね。ただ、表のように型を決めるのではなく、比較的自由にデータを入れられ、自動的にインデックシングされるとのこと。
# QUERY your data set using this simple set of operators: =, !=, <, > <=, >=, STARTS-WITH, AND, OR, NOT, INTERSECTION AND UNION. Query execution time is currently limited to 5 seconds. Amazon SimpleDB is designed for real-time applications and is optimized for those use cases.
クエリーはいたってシンプルで、上記の範囲のみです。SQLにあるような高度な機能、例えばアグリゲーション(集約)などは全くありませんが、「それだけ出来れば多くのアプリには十分」という割り切りの精神が見えてきます。
プログラミング言語への対応も、PHP、Perl、C#、VB.NET、Javaと充実しています。独自APIですが、シンプルですので操作方法を覚えるのにはそれほど難しくはないと思います。おそらく他言語への対応も有志によって進むと思います。
機能面では(RDBMSと比べると)明らかに少ないですが、WEBサービスですので
- 管理不要 !
なのが非常に大きいですね。
導入不要。INDEXの管理もバックアップも不要。スタンバイDBの作成も(多分、Amazonを信頼すれば)不要。RDBMS悩みの一つがその管理である(なので各RDBMSベンダーは管理を自動化しようとしている)のですから、考えてみればデータベースほどWEBサービス向きのサービスは無いのかもしれません。できれば管理なんて誰もやりたくないわけですしね。
もちろん、ディスクやネットワークなどが高いレベルで信頼できる状態でないと使い物にならないわけですが、そこはAmazonのインフラですから可用性の面で非常に期待できます。
どこまでの範囲で適用できるのか、どれくらい管理が楽になるのか、コスト面で優位性が出るのはどれぐらいのサイズなのか、など実に興味深いです。
今後アプリケーションはすべてWEBになるというような話を聞くことがありますが、このSimple DBはデータベースソフトウェアの未来の形を表しているのでしょうか。色々課題はあるとは思いますが、期待して見て行きたいと思っています。もしかしたら2年後にはDB2にも「WEBサービスライセンス」なんてのが出来ているかもしれません。